五右衛門風呂

 五右衛門風呂いうのん知っとるか。昔、大盗賊、石川五右衛門が釜ゆでの刑になったという、ほんまに怖い話からついたそうな。
 かまどの上に鉄釜を据えて木の桶を置き、下から火を焚いて、直接沸かす風呂のことを言うんや。底板が浮いとって、お風呂に入るときには踏み沈めなあかんのや。ステンレスやポリの風呂桶なんかあらへんで。

 昭和の中ごろまで田舎の家は、隣もその隣も、みんな五右衛門風呂やった。風呂焚きは、いつも子供の仕事でな、勉強なんかせえへん、家の仕事をよう手伝うのがえらい子やった。

 まず第一に、風呂に水を入れる。水道みたいなもんはあらへん。井戸から水を汲み、バケツで何回も入れる。重労働やった。次に、風呂を焚く。ガスや電気や灯油もあらへん。麦わらや枝豆の木や藁を結んで焚いた。ちょっとええ時は柴を焚いた。もっとええ時は山からとってきた木を割り木にして焚いた。

 子供だけで風呂に入ると、上手に底板が入らず、ぷかぷか浮いて困ったもんや。風呂に下駄をはいて入ったと、漫画のような話もほんまもんやった。やんちゃな町の子が遊びに来て、風呂に入りたいと言うと、田舎のおっちゃんに「おまえ、暴れたら窯の底が抜けるんやぞ。そないなことになったらげんこつ一発や」目を剥いて脅され、怖い思いをしたというこっちゃ。

(注)
 かまどの中の火がゆっくりと消えるまで、余熱が残っていたので湯冷めもしにくく、体がポカポカと暖かさが長く続いた。

西播磨生活創造しんぶん「ネットめばえ」 2017年11月1日発行 vol.132掲載

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