蚊帳(かや)

「あついなあ」

夏が来るとうちわをブイブイとあおいだもんや。どの家も、蚊取り線香に火をつけ、防蚊対策をした。

夜ともなると、一番大きな部屋に蚊帳を吊った。なんで大きな部屋かというと、家族皆が、雑魚寝状態で蚊帳の中で寝たからや。

蚊帳は萌黄色で、天井になる縁ふちは紅色やった。底がない四角 い状態で、布地は麻や綿で、1mmほどの荒い網目になっていた。なんせ、虫は通さず風を通す優れものや。

取り付け方を教えたる。夜になると、家族分の布団をびっしりと敷き、その上に蚊帳を吊る。簡単に取り付けたり外したりできるように、長押なげしのくぼみに鉤かぎを打ち付けて、蚊帳の四方についている輪をかけたり、また、部屋の四隅に紐をつけ、蚊帳の輪を括ったりした。

蚊帳に入る時がたいへんや。「蚊を入れたらあかんで」と父ちゃんが言う。蚊が入らんように蚊帳の縁をバタバタさせて、ぱっと入るんや。それでも蚊が入った。寝ていると蚊のブーンと飛ぶ音がする。寝られへん。みんなで起きて蚊を追い回して捕まえるんやけど「また、蚊を入れたな」とよう怒られたもんやった。

寝相の悪い兄ちゃんに顔を蹴られたりしたけど、蚊帳を吊ると「ああ、夏が来た」と思われ、ええもんやったで。

<注>昭和の後期から、殺虫剤や下水の普及、網戸、空調設備の普及により蚊帳は姿を消した。最近、電気も薬品も使わない防蚊 対策として、見直されている。

西播磨生活創造しんぶん「ネットめばえ」 2019年8月1日発行 vol.139掲載

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