せんにちばき

 今日は朝から雨やった。 

「いややなあ」

 どんよりと低く垂れこめた雲を見上げながら、ため息をしているのは、お母ちゃんが帯芯で作ってくれたカバンを肩から下げた俺。「兄ちゃんはこうもり傘で俺は破れた番傘か」

 俺は、重い番傘を回しながらお兄ちゃんの後を追った。

 のんびりとした田舎の風景がある昭和の中頃のことや。

 このころ、地べたから鼻緒まで硬いゴムで作られた青や、灰色をしたゴム草履が、全国的に大流行していた。

 このゴム草履のことを、「せんにちばき」といった。

 大人も子供もおじいもおばあも、はだしの足に、ペタペタと音をさせて履いていた。「せんにちばき」は、漢字では千日履きらしい。千日履いても破れへんほど、丈夫やからなんやと。

 晴れの日は埃を上げて歩いた。

 けど、雨の日は大変やった。

 水にぬれるとゴムの草履は、足の裏がつるつると滑って歩きづらい。また背中まで、ぺちゃぺちゃと泥水を跳ね上げて歩くから、上手に歩けとお母ちゃんによう怒られた。けど、お母ちゃんも泥水を跳ねあげて、背中まで泥をつけとったけどな。

 女の子はおかっぱ頭、男の子はいがぐり頭でどちらも「せんにちばき」をはいていた。


「せんにちばき」をはき番傘をさした男の子

西播磨生活創造しんぶん「ネットめばえ」 2016年2月1日発行vol.125掲載

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