田植え

「水が入るで。早よせな、あたいとこだけ遅れてしまうがな」田植えの時期になると、ばあちゃんが父ちゃんの前でわめきよる。

父ちゃんは勤めとるさかいに、じいちゃんとばあちゃんと母ちゃんの3ちゃん農家や。田植えの時は父ちゃんも会社を休んだ。子供達の学校も休みになった。田植えは子供も一人役で家族総出や。

暗いうちから、苗代に行くんや。みんなで苗を一本ずつ丁寧に引いて藁でくくる。前の日から父ちゃんは牛を使って、水の入った田んぼの代かきをした。

じいちゃんは苗をいっぱい積 んだ籠を天秤棒で担ぎ、田んぼの畔からあちこちに投げる。父ちゃんと母ちゃんが印のついた長い紐と木でできた大きな三角形の定規みたいなものを持ち、 田んぼに真っ直ぐな線を引く。子供も交じって基本の親植えをするんや。「きちっと植えんと浮いてしまう。子供やゆうても容赦せんぞ」子供達は、親植えで、田植えの練習をした。

大人は苗を持つと、ひょいひょいと調子をつけて広い田んぼを休みもしないで植える。池に水番がついて、順番に田に水が入る。

子供でも腰が痛くなるのに、大人は黙って頑張るんやからえらいとつくづく思ったもんや。

〈注〉昭和 45 年ごろから農家にも、トラクター、耕運機、田植え機と、多くの機械が使われるようになり、田舎の風景も違ってきた。牛の力を借りて人と共同で仕事をしてきた、きつい仕事も随分軽減された。

西播磨生活創造しんぶん「ネットめばえ」 2019年5月1日発行vol.138

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